「へえ、それじゃあピットは本物の天使なんだ!」
とても賑やかな人ごみの中、赤い髪の少年が、親友と話すように喋りながら歩いていた。
「うん。一応僕も少しなら飛べるんだ」
相手はピット・・会って間もない人物である。
「スゴーイ!」
尊敬のキラキラと輝く瞳のまなざしがピットを見つめる。
「あはは・・本当に少しだけなんだけどね」
2人が出会ったのは数十分ほど前。空から落ちてきたピットをこの少年「マオ」が助けたのである。
「それにしてもさ、ここって僕のいた場所と全然空気違うんだよね・・」
事実を確認するように、ピットが言う。
「?どういうコト?」
「何だろうね・・風の匂いが違うし、見たこと無い言葉も聞こえてくるし。」「マナとか、フォルスとか」
うーん、と悩みながらピットは考え込んでいる。
「んーと、この世界そのものがいろんな世界を混ぜ込んだような世界だからネ・・」
「そうなの?」
「うん。話すと長くなるんだけど・・・・」
マオが今まさに説明をしようとしたその時。
「・・・ピット!ピットじゃないか!」
一人の少年がこちらに走って来た。どうやらピットを知っているらしい。
「あれ、レッド。どうしたの?」
オシャレなリュックを背負った少年――レッドは呼吸を整えている。走りすぎたのだろうか。
「ここ・・ポケモンがいないみたいなんだ」
「あ・・・言われてみれば!」
「ポケモン?」
マオが取り残されて、2人で話が盛り上がっているが・・・
「ねぇ、2人って明らかにその・・この世界の人じゃないよネ?」
マオは話からすぐに事情を理解した。それを見たピットは、
「うん。実は・・・」
自分の世界のことをを説明することにした。

「なるほど、何か不思議な力でここへ迷い込んできたってわけなんだね」
「そうみたいなんだ。でも、よくわからない事だらけで・・・」
何となく現状を理解したようでそうでないマオ。無理もないだろう。
若干混乱している様子だったが、ひとまずの疑問は置いておくことにした。
「ふわっふわーきらっきらーひゅるるるーん」
「あははっそれなんの歌?」
「2人がこの世界に来た歌だよ!」
ビッと自信ありげに親指を立てるマオ。心なしか顔が輝いてみえる。
その楽しそうな様子に、ピットもつられて歌い出した。
その声は次第に大きくなり、周りの注目を浴びるかたちとなった。
「あ、あのさ、ひょっとしたら他の皆も迷い込んだかもしれないよ」
2人のペースに流されまいと、慌ててレッドは話を元に戻す。
はたと立ち止まる2人に何とか危機感をもたせようと必死になる。
特に危険が迫っているという事もないのだが、念のためである。
「もう少しこの世界について知りたいんだ。マオ君・・・だっけ?僕たちを案内してくれるかな?」
「いいよ、ついてきて!」
またまたビッと指を立ててマオは走り出した。続けて2人も彼についていく。
そのまま3人は街を抜け、森の見える広い平原へ辿りついた。


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