「うわぁ!!」 マルスの前に、いきなり暴れ馬が来た。しかし、馬はこちらを見るなりこちらに近づいてきた。 マルスはその馬にどこか見覚えがあった。 「あれ・・・・エポナ?」 まだ鼻息は荒いが、出てきた時よりは多少落ち着いている。 「エポナ、リンクはどうしたんだ?」 ぷるるるる、と鼻息で何かを訴えている。 「一緒に探すかい?」 と、マルスが言うと少し腰を低くした。 「ん、乗るよ」 馴れた手つきでエポナにまたがったマルスは、とりあえずリンクを探すことにした。 「リンクー!いたら返事してくれー!!」 剣士探索中・・・ 「おかしいな・・エポナがいたってことはこの辺にいるはずなんだけど」 と、グチのようなものをこぼしたその時。 リンクの姿が遠くにだが見えた。アイクと、誰か・・・知らない剣士が2人いる。 「2人は・・兄弟なのかな?」 見知らぬ剣士は、2人とも髪が金髪であった。片方は長く、片方は短いが。 「・・・似てる」 実に、よく似ていた。おそらく血縁者であろう。マルスはそう確信した。 「っと・・・そうじゃない、エポナ、行くよ!」 勢いよくエポナが走り出す、よっぽど嬉しいのだろう。 「おーい、リンク!アイクー!」 リンクたちが振り向き、驚いていた。 「マルスじゃないか。エポナを連れてきてくれたのか?」 エポナは主人を見つけるなり、嬉しそうに駆け寄ってきた。 マルスはひょいと飛び降り、改めて剣士風の2人に挨拶をする。 「やあ、初めまして。僕はマルス。ここにいるリンクとアイクの・・・知り合いだよ。 見たところ、僕たちと同じ剣士のようだけど・・・」 「へへ、そうだよ。俺はカイル。で、こっちはとうさ・・・じゃなくて、スタンさん!この世界の英雄なんだ!」 少年剣士、カイルは満面の笑みでそう答える。 一方の青年剣士、スタンは少々照れながらも笑っている。まんざらでもなさそうだ。 「俺達が迷っている所に声をかけてくれたんだが・・・ こちらの状況を何と説明していいか困っていたところなんだ」 いつの間にか腰を下ろしていたアイクが口を挟む。 リンクも自分達の置かれている状況に困っているらしく、マルスに目配りをする。 「君たちはこの辺じゃ見ない姿をしているけど・・・遠くから来たのかい?」 とりあえず、といった様子でスタンが訊ねるが 彼らも声をかけたはいいものの、複雑な事情があると分かり少々困惑していた。 「遠くから、というか、なんというか・・・そうだ。 とりあえず、この辺りで一番大きな街はあるかな? ひょっとしたら僕たちと同じ状況になった仲間が他にもいるかもしれないし 情報を集めるにも、なるべく人が多くいる場所のほうがなにかといいからね」 何とか機転を利かせたマルス。一行もそれに納得した様子だった。 「そうだね、じゃあひとまず街へ移動しよう!確かここから真っ直ぐいけばすぐだよ」 カイルはそう言うとマルス達の手をとり駆け出した。 街の喫茶店。その中。2人の「代表者」ともいえる存在が話し合っていた。 「・・・えーと・・現状を整理しよう。そのバトル大会?の調整をすることになって・・・」 赤いマントを付けた白い鎧の剣士と、 「その間休暇を取ろうって事になったのさ。んで、せっかくだから平和に過ごしたいなって話してて・・」 青いつなぎに赤い帽子の男性。 2人は異世界・・赤い帽子の男性の世界に関しての話をしていた。 「それで、マスターハンドという人がせっかくだから平和な場所で過ごせるようにする、と言ったと?」 「ああ・・一応断ったんだが、どうやらムリヤリ叶えてしまったらしい。」「目が覚めたら、いつのまにかこの世界にいたよ」 事の始まりは男性・・マリオをはじめとする「戦士」たちのバトルロワイヤル娯楽「スマッシュブラザーズ」。 その娯楽に使う機械の調整・アップグレードの為にしばらく戦いが休みになったことである。 そこで戦士たちはこう口にした「普通の街で普通に過ごしたい」それを管理者「マスターハンド」が叶えようと言い出したのだ。 戦士たちは遠慮したのだが、マスターハンドは有無を言わさずそれを実行した。 その日の晩、皆が眠り目が覚めると、この世界にいたという事だ。 「でも・・それは、マリオさんたちを思ってのことでしょう?」「せっかくだし、皆が集まり次第ここでしばらく過ごしましょうよ」 温厚な彼・・クレスらしい発言であった。 「だが、泊まる場所もないぞ?」 「いえ。いい場所を知ってますんで。」 少しイタズラっぽくクレスが笑う。 「どんな場所だい?そこは・・・」 「ええ。大きな孤児院に、ポワレの美味しい宿屋・・・いろいろアテがあるんです」 空を見ながら、クレスが優しげに笑った。 「そうか・・・実に賑やかで、温かい世界だな」 その顔につられてか、マリオも優しい顔を浮かべた。 が、それも束の間。 外から激しい爆音が轟いたかと思うと、人の雪崩が一気に押し寄せてきた。 「な、何事だ!」 マリオとクレスが目にしたのは、見覚えのある戦士やこの世界の住人達が 血相を変えてこの喫茶店へ飛び込んできた姿だった。 「た、助けてくれマリオ!僕たちは追われているんだ!」 あの冷静なマルスでさえも取り乱していた。 「クレス!ちょうどいいところに!や、奴を止めてくれ!」 「い、一体何が・・・」 マリオが振り返ると、とても大きな機械を持った一人の科学者風少女と目が合った。 「さあ、追い詰めたわよ・・・今度こそアタシの研究に付き合ってもらうんだからね!」 そういうと科学者風少女ハロルドは、手始めに逃げ遅れたらしいアイクに向かって光線を発射した。 すると、アイクの姿はあっという間にフィギュア化してしまったのだ。 「こ、これはどういう事だ!?」 「見たままよ。どうやらこの見知らぬ人達は、ある一定の攻撃を食らうと 体がフィギュア化してしまうようなの。といっても、まだ研究段階だから詳しくはわからないけどね〜」 面白い研究対象を見つけたぞ、といわんばかりの笑みを浮かべるハロルド。一同に猛烈な戦慄が走る。 「せっかくの休日をこんな物騒な人物のせいでつぶされてたまるか!」 ピットはハロルドの持っている兵器に向けて弓を放った。しかしそれは容易く弾かれてしまう。 「なかなかの戦闘能力ね。でもこのアタシの発明した『アイシア2号』にそんなヤワな攻撃は効かないわ」 そういうと、ピットに向けて光線を放つ。それをとっさに避けたピットだったが 背後にいたレッドにそれが直撃してしまい、あえなくフィギュア化してしまった。 「お、落ち着け皆!こんな所で乱闘している場合じゃないぞ!」 慌ててとめに入るマリオ。しかしハロルドは貴重な研究対象を逃さんと狙いを定めているし ファイター達はそうはさせまいと、いつもの闘志を燃やしてしまっている。 「・・・君たちの世界は、いつもこんな感じなのかい?」 やれやれ・・・とうなだれるマリオとクレス。こうなってしまっては止める術がない。 「あ・・でもコレを止める人物を少し知ってる・・・」 クレスはどうやら思い当たる人物があるようだ。 「本当かい?」 「でも・・・こんな場所に来る訳がないか」「あいつ、だしなぁ・・・」 そう言うクレスの顔は、どこか悲しく切ない顔だった。 「・・・?」 今から数日前。その人物とクレスは珍しく楽しく、そして穏やかに話し合っていた。 『この世界は・・本当に平和だ』 金髪の男性が、静かに言葉を発した。 『ああ。旅をして、そして・・あなたを敵にして戦っていた時が、嘘のようだ』 クレスと男性、二人肩を並べて話している。 『・・・・私も、お前も役目を果たした。だからこうしてここにいて、語りあっている』『それは過去が事実である証だ』 『はは、そうだね』『・・・・あの、さ』 少し、空気が重くなる。 『ここに来て・・・楽しい?』 それはクレスがダオスをこの世界で見つけてからずっと気にかけていた思いだった。 『・・・・・・・お前は、どうなんだ?』 『僕は・・楽しいよ。旅をしたみんなにまた会えたから・・・』『それに、友達も増えた・・・』 後悔はしていない、そう言いたげなクレスの目がダオスの目に映る。 『・・そうか。』『私も・・・楽しいさ。守るべき民を救えたと知った。平穏もここにある。十分すぎる程だ・・』 『・・・そう、か』 ダオスの大きい手が、クレスの身体を自分の方へと寄せる。 『えっ』 『・・・・もういいんだ。気を使わなくても。』『これからは・・私は・・・・・』 じょじょに声が小さくなっていくのと、身体を寄せられて動揺しているのと。 それが理由でクレスは最後の辺りが聞き取れなかった。 『・・・そろそろ、日が暮れる。もう帰るがいい』 『あ・・うん。』『・・・・・それじゃあ』 向けられたクレス本人こそ辛くて顔が見れなかったが、ダオスの顔はとても優しいものだった。 「・・・・・・・・・・・・」 クレスは、今にも泣きそうな顔をしていた。 しかしその重苦しい雰囲気の近くでは、まさに大乱闘とも言うべき争いが起きていた。 ハロルドの機械から発せられる大きな光線が撃たれる度に、90%の確率で誰かがフィギュアに変わる。 避けられたとしても、その後ろにいた誰かに当たってしまうのである。 その結果は一目瞭然、こちらの世界で言う「即死」である。 「しかしすごい有様だな・・これは後でいくら弁償になるか・・・」 気付くと、マリオの隣に二足歩行をする狐がいた。 「おや、フォックス。お前は参加しなくていいのか?」 「いや・・・これを見てくれ」 そう言いながらフォックスが置いたのは、二足で立つ鳥のフィギュアであった。 「ファルコ・・・やられたのか」 「ああ。俺はフィギュア化したファルコを運んでいたんだ」 仲間思いのリーダーを務めるフォックスらしい、とマリオはうなずいた。 「しかし、アレ誰が止めるんだ・・?」 「そもそも止められるのかどうかすら分からないし・・・」 2人が諦めかけた、その時であった。 「タイムストップ!!!」 高らかなコールが聞こえた。 ―――次の瞬間。ハロルドの持っていた機械が壊れ、ハロルド自身もどこかに消えていた――否、消えてはいなかった。 何者かによって、地面に打ち付けられていた。 その何者かが、ハロルドの頭を掴み地面に叩きつけているように見える。 「あれは・・・・」 クレスが、声をあげた。 次へ→